五十肩(肩関節周囲炎、frozen shoulder)との戦い−−2002年
あなたはある程度年齢がいってきて肩を動かした時に痛みが出てきたことがありませんか? そしてその肩の痛みは五十肩(肩関節周囲炎、frozen shoulder)だと思っていますか? 五十肩は、無理な運動や加齢で肩関節周囲の組織が硬化したり石灰化して炎症を起こしたりして、痛みや動きの制限が出てくるものです。肩に痛みが走ったからといって簡単に五十肩と決め付けていいのでしょうか? もしも違っていて、もっとややこしい椎間板ヘルニア(注意1)だったり頚椎症性脊髄症(注意2)だとしたらどうしますか? そんな時には私の行ったようなことをすれば更に悪くするだけですから、整形外科に行って正しい診断を受けてから、運動療法を始めてくださいね。
2002年5月頃に運転をしていて車のルームミラーを調整しようしたら左肩に痛みが走りました。腕を一定の方向に上げると痛みが非常に強く起こりかなり辛いのに驚きました。ちょっと前から左肩の調子が悪いのに気がついてはいましたが。連休に行ったパラグライダーをしていて左のブレークコードが痛みがあって十分に引けなくて引きにくかったことは確かです。まあ、そのうちに治るだろうとあまり気にしていなかったのですが、痛みは段々と強くなっていきました。夜、痛みが強くなって左を下にして横になって寝ることはできなくて仰向けか右下にして横になるようにしました。寝返りをうったりするのも辛くなってきて、これはまずいなと、なんか治療をしたり、リハビリテーションをしないといけないと思うようになってきました。痛みは気にすれば気にするほど痛みの閾値(痛みを感じる強さ:痛みとして感じるにはノイズと区別するためにある程度の刺激の強さがないと感じないように生体はできている)が下がるので痛みが強くなったように感じたのかもしれません。私も痛みの治療をちょっとしたしているので、圧痛点(押して痛いが起こるところ)を肩関節で筋肉の付着部位を探してみました。圧痛点と思われるところは2ヶ所ほどありました。圧痛点に局所麻酔薬(痛みをとる)とステロイド(炎症を押さえる)を注射すれば痛みと炎症を押さえることができます。それをきっかけにして良い方に向うのではないかとも思った(坂の上に雪だるまを作るようなものです:痛いから血管などが締まる、血流が悪くなる、組織が傷む、痛み物質が出るという悪循環に陥る)のですが、自分で注射をするわけにもいかずに諦めました(まあ、仲間の先生に注射してもらえばいいことなのですが)。そんなわけで電動のマッサージ器で圧痛点の場所をマッサージしたり、風呂に入って暖めてマッサージなどをしながら、腕を回す運動などをしていました。寝方が悪かったり、ある姿勢をとったりすると腕がしびれる感じがするような気もしたので、ちょっと気になって手術室で手術の合間に整形外科の部長に肩の痛みの話をしました。腕を動かしながら痛みの出方を話しながら診てもらったら、肩の痛みではない、首からの痛みではないのかと言われてしまいました。私にはちょっとショックでした。というのも2月に車が全損になる交通事故を起こしているからです。物損ですませたのですが、シートベルトをしてましたが、70〜80kmでぶつかったのでいわゆる頚椎捻挫になってもおかしくない事実があったからです(ハンドルで胸をうってたようで肋骨骨折をしていた)。頚椎症性脊髄症の手術の麻酔を何度もかけていてあまりなりたくない病気のひとつでした。そういうわけで頚椎のMRIを撮ることにしました。狭い部屋に閉じ込められて20分あまり動かないでいるというのは結構辛いものでした。頚椎には若干の狭窄というか年齢的変化が見られるがそれほど問題になるものではなさそうでした。つまり、現在の痛みは頚椎の問題から来るものではなく、肩や筋肉から来るものであるというのが分かったわけです。というわけで、頚椎性脊髄症ではなくて一安心ということでした。気をつけて普段から肩を回したりする運動をするようにしていたのですが、思ったより改善はしませんでした。左肩を下にして眠るのが辛いというのもまだ残っていました。このころに枕の高さも五十肩の痛みに関係するのではということも読んだので、横になって寝るときに枕の高さを注意してみました。寝る時に横になった時の肩の位置を痛みが出ないポジションにするという工夫をすることにしました。どうするかといえば腕を頭側に持ち上げるようにしながら横になると眠るときに痛みが出ないし朝起きたときに楽であるということに気がつきました。徐々にリハビリテーションの効果が出てきたのか、少しずつ動かしはじめれば途中から動かすのに痛みをあまり感じなく動かせるようになりつつありました。肩を回すというか動かす運動として何気なく左腕で投球練習をしてみました。昔、両手で投げられるようにと左手で投球練習をしたように何回か投げる練習をしてみました。この運動をしているときには特に変わったことはなく肩の痛みが強くなったり弱くなったりするわけではありませんでした。その日はそれで終わったのですが、翌日になると驚いたことに肩を動かしたときの痛みが前日よりずうっと弱くなっていました。それから肩の運動として気をつけて投げる練習をすることにしました。投げる練習をしてからは痛みが段階的に減っていったような気がします(もしかしたら、良くなる時期と重なった可能性も否定はできないのですが)。投げる練習は手に何ももたずに空でするよりボールや物を持って投げる練習をした方が良いと思います。その方が投げる時も肩を傷めないようで痛くなりませんしリハビリテーションの効果もその方が高いようです。で、腕の筋力トレーニングもできるようになってきました。5月の半ばの左の肩を動かしたり、横になって寝たりするのにも痛みが出ていた頃に比べたら格段の改善です。思わぬときに痛みが出てきたりしてしましたが、3ヶ月ぐらいして大分良くなったと思います。この運動療法が誰にでも当てはまるわけではありませんが、リハビリテーションの本にも書かれていない運動療法なのでおもしろいかもしれません。まだ、いまだに、時々、寝方が悪いと肩を動かすと痛かったりしますが、痛みの程度は非常に軽く3ヶ月前に比べたら、天国と地獄ぐらいの差の改善が見られました。
4ヵ月後夏休みを兼ねて合宿をして空を飛ぶことを再開しました。痛みが出ることも無く、力が入らなくなることも無くこれは大丈夫と安心をしていました。けれども、治ったと思って放ったらかしもまた調子が落ちたりすることもありました。どうも、寝相が悪いのか枕の高さのためか朝起きてみると肩の調子がいまいちだったりして調子が落ちたりすることもあるようです。リハビリテーションは気がついたときにするようにしました。
テレビ番組で青木功と丸山茂樹がゴルフ対談をしていました。その中でゴルフで心・技・体のうち何が大切なのか議論になっていました。二人とも「体」であるといっていました。体(体力)がなければ何もついてこない、一にも二にも三にも体力と言っていました。青木はそのために筋力トレーニングを欠かさないということでした。私も当たっていると思います。当直などや夜遅くまでの仕事が辛くなってますから。体がしんどければ気力も沸いてきませんし、精神も集中できないとと思います。ただトレーニングといってもいきなり無理をするととんでもないことが待っているようです。この番組を見た後、腰を動かす運動をがんがんしたら、ちょっと無理をしたようで腰を痛めてしまいました。そのために漢方薬を飲む羽目になったりしました。気をつけて常にベストな体のコンディションになるように時間をかけてゆっくりとトレーニングをしないとこれからはいけないようです。
五十肩には一定の時間が経てば痛みが自然と和らいでいくのかもしれません(自然寛解といいます)。痛みが出現してから8ヶ月ほど経ってからは運動をしたりしなければ痛みが出ることは全くといって無いので、五十肩になって辛い時期があったということも忘れてしまうほどです。どういう風に寝るかもほとんど問題がなくなりました。ただ痛かった左肩を下にして寝ることはほとんどありません。皆さんも諦めないでリハビリテーションとか励んでください。
これを書き終えたのが2002年12月のことでした。1ヶ月余り肩の運動をしなかったところ痛みが少し出てきました。リハビリテーションは痛みが取れたからといってすぐに止めてしまってはいけないようです。可動域の制限がすぐに出てきてしまう(disuse atrophyというのかな)ようです。リハビリテーションを再開することによってほとんど痛くない状況に持っていけています。
注意1 椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは脊椎の椎体と椎体に間にある軟骨が壊れて一部が脊髄を圧迫する疾患です。私の同僚は競技スキーで転倒して首を強度に後屈してなりました。外傷性の場合が多いようです。痛みだけで運動神経の障害がほとんどない場合は頚部硬膜外ブロックという治療法があります。硬膜は脊髄を取り囲んでいる一番外側の膜です。その硬膜と黄色靭帯の間に硬膜外腔があります。この硬膜外腔に局所麻酔剤や抗炎症剤(ステロイド)を注入します。局所麻酔薬は痛み神経や交感神経をブロックし血流を改善するようにして運動神経をブロックしないようにし、痛みを緩和する治療法です。効果がある人は局所麻酔薬の効果が切れた後も除痛効果が持続します。さらに、抗炎症作用を期待してステロイド剤などを加えれば、圧迫や癒着による神経炎が改善されてより大きな効果がもたらされます。しかし圧迫症状が強い場合は手術適応となるものがあります。
注意2 頚椎性脊髄症
頚髄症とは、頚椎の椎間板、椎間関節などに生じた年齢的変化が原因で椎間板が膨隆したり、靱帯の肥厚したり、骨棘の形成されたりして脊髄を圧迫するために起こる病気です。脊髄が首の位置で圧迫されるために症状は首から肩だけではなく足にも症状が現れます。首の痛みや手のしびれから始まることが多く、だんだんしびれが強くなってきて、次に運動神経が冒されてきて次第に手に力が入らなくて箸を落とすようになったとか躓きやすくなった(drop footといって爪先を持ち上げる運動神経が麻痺して上がらなくなって躓いてしまう)とか歩けなくなったとかいう症状が出てきます。徐々に四肢麻痺に陥る日本人に多い疾患です。痛みだけで運動神経の障害がほとんどない場合は椎間板ヘルニアと同様に頚部硬膜外ブロックという治療法があります。しかし圧迫症状が強くて手先がうまく使えないとか躓くようになったとかなった場合は手術適応となるものがあります。しびれが強くなった時点で手術をすればほとんどの症状は後戻りが可能だと思います。しかし、そのまま放置しているともっと進んでおしっこが出せなくなったとか便を垂れ流しするようになったりします(排尿排便が傷害されます。こうなってしまうと手術しても回復させるのは無理な場合もありますし大変です)ので注意が必要です。
注意3 肩周辺の痛みの原因
1)頚椎疾患
・変形性脊髄症
・椎間関節症(facet pain)
・椎間板ヘルニア
・脊椎靭帯骨化
・炎症etc
2)腕神経障害
・広い意味での胸郭出口症候群
解剖的に腕へいく神経(腕神経叢)は鎖骨と第一肋骨との狭い間を走っています。
腕へいく鎖骨下静脈や鎖骨下動脈も同じ場所を走ります。
腕神経叢は前斜角筋と中斜角筋の間と抜けていってます。
神経が筋肉(中斜角筋など)で圧迫されて起こります。
3)肩関節疾患
・肩関節周囲炎(五十肩)
・肩板損傷
・その他